episode4〜再診〜

3/2 午前中だけ有休をもらって、待ちに待った産婦人科へ。

 

家を出るとまたもや雨。 

バタバタと2人を保育園に送り、そのまま買い物を済ませる。

明日がひな祭りなので、ちらし寿司の材料を買った。

明日も仕事やから今日の夜から仕込まないとなぁー…なんて考えながら産婦人科へ入る。

 

検尿、血圧、体重。

 

この日は雨だけど、ちょっと混んでいて

、それでも15分くらいで呼んでもらえる。

お腹の大きい妊婦さんたちとすれ違う度にいいなと思う。もうすぐ会えるんやなーいいなーとチラッと思う。

 

内診台へ。

 

「あれからどーも変わりない?」

 

「はい。…いや、2日前くらいから茶色いオリモノみたいなんが出てたんですけど、お腹もいたくないし赤くはなってこなかったので様子みてました。」

 

仕事中に茶色のオリモノが出て、一瞬ヒヤっとしたのだが、すぐにネットで調べると初期に茶色のオリモノはよく出ることや、腹痛を伴わず鮮血になっていなければ様子をみていいという内容が多く少し安心していた。

 

それに前回の受診時にこの先生からも多少の出血は様子みたらいーよと言われていて、その時は「出血なんて怖いわ、なんでそんなこと言うんやろ。」くらいにしか思っていなかった。

 

この日の内診は、とても長かった。

 

「おかしーなー、赤ちゃんの影はあるんやけどな、ホラ見てみ?動いてる感じがないやろー?」

 

「…。」

 

「袋はちょっと大きくなってるなぁー、

赤ちゃんもな見えるんやけど、どう見ても動いてるように見えないんやわ。」

 

「…はい。」

 

「前来てくれてから3週間あいてて心拍が確認できひんっていうのはちょっとおかしいんやわ。つわりはどうなんや?」

 

「あります!」 必死に言った。

でもそういえばここ2.3日少しマシなような…と思ったけど、言わなかった。

 

「そーやなー、つわりはあるままってこともあるんやわー。生理不順や言ってたけど3週間とか1ヶ月も遅れたりすることもあったんか?もう計算からいくとだいぶ週数たってるはずやのに、この大きさやと6週くらいのもんなんや。」

 

「…2週間くらいは遅れることもありましたけど…。」もうパニックだった。

 

内診が終わり、診察室でもう一度同じような内容の会話をする。

 

先生の表情がかなり曇っていることから、今の状況がかなりよくないということは分かった。

 

「…まぁそういうことやから、念のため1週間様子みてまた見せて。その時にやっぱり大きくなってない、心臓動いてないんやったら、それはもう、諦めなあかんてことなんやわ。」

 

「諦める…?」

この時にやっと先生の曇った表情が何を意味してるのか分かった。

 

分かってしまった瞬間、涙が止まらなかった。

「それは1週間後にみてもらった時に大きくなってる可能性もあるってことですよね?」 

もう、すがる思いだった。

 

先生は私の顔をしっかり見て、「正直言って厳しいと思うわ。この1週間は気持ちの整理をするための1週間やと思って。」 

 

崖から突き落とされた気分だった。

 

先生は淡々とした話し方だけど、ちゃんと私の顔を見てくれていて、その眼はとても優しく私を気遣う様子が分かった。

だから嫌悪感や疑う気持ちが生まれず、それが更に悲しかった。

 

「仕事は休んどきー、看護師さんか?産科の経験はないの?」

診断書を書きながら、毎回産婦人科できかれる質問をされる。

 

「ありません。」 いつもなら少しニコッとして答えられるのに、その時はもう俯くしかなかった。

 

切迫流産

 

診断書にそう書きこんでから、チラッと私を見て、「診断はこれで間違いないと思うわ。」そう言って先生も目を伏せた。

 

帰り際、もう涙が止まらなくて、でもそれでもなにかにすがりたくて「一週間後、万が一ってこともあるんですよね?」 

 

私は本当にしつこい。

 

「あんな、これはもう運命なんや。誰にもどうすることもできへん。あんたがもういいって言うんやったら明日でも手術できるんやで。でもそんなんじゃ、気持ちおさまらんやろ?だから一週間様子みてきなさい。」

先生はゆっくり諭すように話してくれた。